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第三回ベーカリージャパンカップ
「ベーカリー・ジャパンカップ」(全日本製パン技術選手権大会)とは?
ベーカリー・ジャパンカップとは、2年に一度の製パン技術を競う、全国のパン職人たちの選手権大会です。リテイルベーカリーの技術向上や日本におけるパン業界の発展を目的に、パン食普及協議会・全日本パン協同組合連合会が主催しています。地区予選を勝ち抜いた菓子パン・調理パン・食パンの各部門の中から4名が選出され、最終決勝戦を戦い抜きました。3回目となった本大会には多くのマスコミや見学者が訪れました。
2年に一度のパン職人日本一を競う決勝戦が2017年も開催されました!
本年2017年で3回目を迎えた「ベーカリー・ジャパンカップ」。今大会は、インテックス大阪で開催されました。2月22日〜24日の3日間に渡り各部門ごとに半日がかりでの競技会です。当日のモバックショウ会場内での様子と、審査結果を部門ごとにレポートいたします!
2月22日 オープニングセレモニー
菓子パン部門の決勝が行われた初日当日には、オープニングセレモニーとして、モバックショウの会場オープンに合わせ、パン食普及協議会細貝会長と、全日本パン協同組合連合会西川会長の2名がご挨拶いたしました。
細貝会長からは、「今回で3回目のベーカリー・ジャパンカップが無事に開催されたことを喜ばしく思います。決勝戦まで勝ち抜かれた選手の皆様が日頃の実力をあますことなく発揮されることを期待しています」とご挨拶いただきました。また、西川会長からは「これまで美味しいものはヨーロッパにあるというのが定説でしたが、日本でも美味しいパンが食べられる、日本のパンは世界のパンなんだということを、こうした機会を通じて技術を向上させ、世界でも広まることを望んでいます」と語られました。
競技内容
テーマは「日本のパン」です。競技は、日本独自の製パン技術競技として、⑴菓子パン部門、⑵調理パン部門、⑶食パン部門の3部門になります。挑戦者は、その中から一つエントリーします。優秀な成績を修めた方には、厚生労働大臣賞や農林水産大臣賞、中央職業能力開発協会会長賞などが贈られます。
なお、今回は、ベーカリー・ジャパンカップにご賛同いただき食材や型などをご提供いただきましたメーカー各社様の商品を展示、ご紹介いたしました。
菓子パン部門
課題
日本のオールドパンを対象。商品は、「アンパン、クリームパン、メロンパン」の3種類が指定、さらにオリジナルレシピの3種類の6種類を各50個ずつ、計300個を7時間以内に完成させ、片付けまで終わらせます。
今回は、朝早くからマスコミが密着取材などを行うなど、緊迫したムードの中、競技が繰り広げられました。ぱん工房桜道の鴻巣邦治さん(千葉県)は、今回が2回目の挑戦で初の決勝戦進出です。鴻巣さんは元々建築士で脱サラをして数年ほど前にぱん工房桜道を始めました。そんな鴻巣さんにテレ東系BSジャパンの番組「運命の日」で取り上げるため終日、カメラクルーが撮影し続けていました。日本の桜や和のイメージをテーマに米油などの健康面にこだわった食材を使用しました。
今回、紅一点ながらも落ち着いた動作で黙々と作業を続けていたのが、徳島県出身の森吉恵子さん(株式会社パパベル国府店)です。森吉さんは、生まれ育った徳島県の食材にこだわり、地元ではよく知られている食材を全国でもさらにブランド力のある名産として知ってもらいたいとの思いから今回の商品を開発されました。
関西地区を代表して決勝に進出した田中勝さん(株式会社オカノベーカリー)には地元、大阪・神戸のニュース番組が密着、決勝戦当日の夕方にはその様子がオンエアされました。田中さんの主なコンセプトは、厳選された地元の卵や牛乳を使い、高級感がありつつもパクパクいくらでも食べられるような日本人の口に合う親しみやすいパンということでした。
今回で3回目のチャレンジとなるパン屋ボネロの中谷幸司さん(岐阜県)は、家族の名前の由来から商品をイメージし、3人の家族への愛情を込めてオリジナルパン「月の小倉アンパン」、「星のクリームパン」、「太陽のメロンパン」を焼き上げました。さらに、修行時代に転機となった思い出のある南フランスの夜空をテーマに展示しました。
プレゼンテーション・結果発表
3時に片付けまで終わってそこから各自のプレゼンテーションが始まります。
今回は残念ながらすべての商品が完成しなかった競技者もいましたが、7時間で6種類300個のパンを焼き上げるという大変、厳しい課題の中で真価が問われる結果となりました。結果は以下の通りです。(敬称略)
菓子パン部門の優勝はこちら!
調理パン部門
課題
日本の調理パンを対象。商品は、「カレーパン1種類、焼き込み調理パン2種類、ドッグ・バンズを使用した調理パン2種類、食パンを使用した調理パン(サンドイッチ)2種類の計7種類です。各20個ずつ計140個のパンを7時間以内に完成させ、片付けまで終わらせます。
合図と共に一斉にスタートしました。前日までに調理の具材はほとんど仕込んできたという競技者が多いものの、焼き物や、揚げ物は当日に仕上げます。そして、厳しい時間制限の中、慌ただしく混乱しているのかと思えば、調理部門は、緻密にシミュレーションをし、パンと調理の配分を考えスタートしているせいか、落ち着いた雰囲気でした。
今回、初参加で2017年の4月に自身の店舗「インダストリー」をオープンさせるという重冨朋子さん(岡山県)のブースには、惣菜食パンの魅力を伝えつつ、女性パン職人の活躍も伝えたいといことで、NHKの情報番組「あさイチ」のクルーが取材に駆けつけていました。ご本人いわく「パンは夏が売れなくなるのと、夜がダメなので、夜でも食べたくなる、飲みながら食べたくなるようなパンをイメージしました。私は、中でも餃子が一番好きなので餃子パンはイチ押しです」と話していました。
重冨さんのお隣のブースは、同じく女性で東日本から選出された鵜池香苗さん(東京都)です。「ル・スティル」という正統なフランスパンを扱うパン屋さんで働いている鵜池さんは、日本全国にある名産の中から普段できない和の食材を使って、7種類の商品を開発したといいます。「おきなわ ゴーヤカレーパン」や「瀬戸内 たこ焼きアヒージョ」「いわて《Ca va?》サンド」などユニークなネーミングでバラエティ豊かな商品が並びました。
中国・四国・九州地区から選出された永田浩二さん(福岡県・クラウン製パン株式会社)は、今回で2回目の決勝進出です。4人目の子供も生まれ、前回は3位だったのでそれ以上の結果を残したいという意気込みをインタビューでは語っていました。また、熊本出身の永田さんは、九州の特産である明太子やチキン南蛮にこだわり、見た目とネーミングが一致するような商品開発を心がけたといいます。
関西地区から選出された大野聡久さん(大阪府・鳴門屋製パン株式会社)は、長年のキャリアを活かし、これまでの調理パンの概念を覆すような目新しい商品で勝負にでました。地元大阪の特産であるほうれん草やネギなどをメインの食材に加えたことでインパクトの強い商品となりました。お刺身風コッペ(サーモン)や水炊き風コッペなど新鮮で珍しい調理パンも話題を呼んでいました。大野さんは、日本の四季の豊かさと旬の食材のおいしさが引き立つよう商品を構成したといいます。
プレゼンテーション・結果発表
時間にゆとり持って終えた調理パンの競技ですが、最後まで綺麗に片付けられているかどうかも審査の対象になります。豪華にディスプレイされたパンはどれも個性的で人目を引きます。競技を終えた3時からは、4人それぞれにパンに込めた思いをプレゼンテーションします。審査員からも様々な角度からの質問がだされました。来訪者の皆様にも試食していただきましたが、大阪の大野さんの作品には、「居酒屋さんにあったら注文したい」というこれまでにない反応も見られました。結果は以下の通りです。(敬称略)
調理パン部門の優勝はこちら!
優勝者・中央職業能力開発協会会長賞
- 大野 聡久(大阪府)
- 鳴門屋製パン株式会社
準決勝のときから大野さんを見てきましたが、最後まできれいに片付けられていて作業効率性の面でも向上した印象を受けました。漬物や地のものを切り口に、和をイメージしたディスプレイも素晴らしかったと思います。最初に送られてきたレシピも普通の人はここまで書かないだろう、というところまで踏み込まれていて、それも驚きでした。サーモンを使ったコッペパンはハーブオイルに漬け込むなど、衛生面でも気を使っていることがわかってよかったと思います。
周りの協力のお陰です。自分一人では決して達成できることではなかったと思います。大阪産のほうれん草や京都の漬物などを使って、お酒にも合うような調理パンを作れたことが良かったと思います。ありがとうございました。
その他の結果
- 2位 重冨 朋子
- 3位 鵜池 香苗
- 4位 永田 浩二
食パン部門
課題
日本の食パンを対象。商品は、「指定配合食パン(プルマン・山食)の2種類と、テーマ指定(シリアル食パン、アレルギー対応食パン)のオリジナル食パンの2種類、計4種類の24個を7時間以内に完成させ、片付けまで終わらせます。
指定レシピ2種と、テーマ指定のオリジナル食パンの計4種類で競技をする食パン部門。どの審査員も「食パンが一番実力のわかる部門だ」と話していました。全国からの強者が揃い、ハイレベルな戦いが繰り広げられました。
東日本から選出された小倉拓馬さん(東京都)は、ラ・タヴォラ・ディ・オーヴェルニュで副シェフをされています。特にアレルギーを持つお子様にも食べてもらいたいと、アレルギー対応食パンには気を使い、甜菜糖などの優しい食材を使うと同時に、時間がたっても美味しく小麦の香りを味わってもらえるような製法に工夫を凝らしたといいます。
関西地区代表の薮内見輔さん(兵庫県・株式会社オカノベーカリー)は、じっくりと発酵を促す低温製法によって工程を簡素化しつつも、香り、酸味を引き出すことに注力されたそうです。また自家製のル・ヴァン種にこだわり、生地を練る際にも力を入れすぎないなどの工夫を加えることで、しっとりとした生地を生み出し、生でも美味しく食べられるパンに仕上がったといいます。
中部地区代表の宮腰進さん(富山県・ベーカリーみや)は、同県の出身者で「農林10号(ノーリン・テン)」を育種し、東アジアやアマゾンの食料危機を救ったとして世界からも尊敬される稲塚権次郎氏に敬意を表し、希少な農林10号の小麦を使用しました。水種、湯種などの製法を取り入れて、長時間熟成発酵させて旨みを引き出しアレルギー対応をしても美味しく食べられるパンに仕上がったといいます。また、農林10号を使った小麦で、お店で販売しているバケットはもちもちとした食感が人気で、品切れ続出だそうです。
中国・四国・九州地区を代表して決勝戦に勝ち上がったのは、ベークショップ ヒジリのオーナーシェフ岡林栄治さん(高知県)です。
「いかに毎日、おいしくパンを食べていただけるか」にこだわり、黒糖をいれて深みをましたり、生よりも焼いてからの方が美味しく感じられるような材料の配合を考えてみたりと、工夫されたそうです。結果として「あまり重いと毎日は食べたいと思わない」という気づきから北海道産のゆめちからとそれ以外の小麦で6:4にするなどベストマッチな比率を編み出したようです。
プレゼンテーション・結果発表
表面はカリッとしていて中はもっちり、しっとり、生で食べてもおいしい。あるいは、火を通して食べてもらいたいなど、それぞれの競技者の描く理想のパンが次々と披露された今回の食パン部門決勝戦。出来上がりはまさに至極のパンという印象で、試食した方は「どれもおいしい」「甲乙つけがたい」と印象を語っていました。ハイレベルだった決勝戦の結果は以下の通りです。(敬称略)
食パン部門の優勝はこちら!
優勝者・農林水産大臣賞
- 宮腰 進(富山県)
- ベーカリーみや
1つ1つの粉をふるいにかけたり、愛情をもって丁寧に生地接しているなという姿に心打たれました。富山県産の小麦を使われて一生懸命にやっておられる姿は見習わないといけないと思いました。どの種類のものを食べても美味しかったです。驚きました。
富山県出身ですので、チューリップの花にたとえれば、寒い時期があるからこそ春にはきれいな花を咲かせます。こうした実力を競う場があったからこそ技術を伸ばすことができたと思います。こういう機会を与えていただいたことに感謝しています。最後に、パンニュース社の創業者である西川多紀子氏の言葉を紹介し、「本当に、『幸福は美味しいパンのある台所から』だと思います」と話しました。
その他の結果
- 2位 小倉 拓馬
- 3位 岡林 栄治
- 4位 薮内 見輔
パンの生地にレンコンを擦り込むなど、珍しい食材の使い方をしていましたが、もっちりだけでなく食感もしっかり残っていたりと、地元の地産地消の食材をアイディア豊富にうまく使っていました。また、基本の作業が非常に丁寧で、一つ一つの動作に安心感が感じられたところも良かったです。
徳島県の木であるやまももをあんぱんの食材に使ったり、歴史のある祖谷のかずら橋を表現したりと、徳島にある文化や名産をパンに込めました。また、渦潮をモチーフにしたメロンぱんにわかめをエッセンスとして加えるなどで、「これはどんな味がするんだろう?」って興味を持ってもらえるような工夫をしました。お陰でいろいろな方に意見を言っていただけて今日の日を迎えることができました。